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2 裁判例が示した財産分与の性質
まず、この財産分与制度の性質論について詳しく判示した裁判例として、長野地判昭和32年12月4日(下民8巻12号2271号頁)があるのでこれを引用する。
「思うに各国の法制上離婚に際し一方の当事者から他の当事者に財産の給付を求め得る制度は大略以下の三種に分けることができよう。すなわち(一)移籍料(二)財産分与(三)離婚扶養料の三者であり、(一)は離婚原因たる事実が当事者の違法有責行為によって構成される場合に有責の当事者から相手方に対して精神的に被る損害の賠償として支払われるものとして、不法行為の理論によって是認されるものであり、(二)はこれを純粋に解するならば、夫婦が共同生活中に協力によって取得した財産は実質上夫婦の共有に属するとの見地からこれを清算する制度であり、(三)は離婚当事者の生活の保障が主旨である。右のように解するとその額の多寡、履行の方法等を決定する標準は、(一)については相手方が被る精神的苦痛の大小が根本であって、これを慰籍するに相当な額としてはその相手方の財産状態や生活程度も亦大いに関係するが、有責当事者の財産状態は相対的な関係で若干考慮されるに止まり、慰籍料の額が常に有責当事者の有する財産の限度内に止まるべき理由はなく、また支払も一時になすべきものとするのが当然である。(二)については前記のように純粋に解釈する限り、夫婦が共同生活中に取得した財産の額を根本とし、協力の程度が分与の標準となるべきであり、従って分与の額はその財産の額を根本とし、協力の程度が分与の標準となるべきであり、従って分与の額はその財産の額を限度とするのが本則である。分与の」
方法についてはその財産をそのままの状態で分割乃至譲渡するか金銭に換価して支払うかは諸般の事情を考慮して決すべきであるが、換価の不能な財産や条件附権利、いわゆる期待権等を現在の価額に評価し直ちに分与することを強いることは妥当でない。(三)については相手方の従来の生活程度に相応した最低生活費が第一の標準となり、これを支払うべき当事者の財産乃至収入状態も大いに考慮されなければならないが、その支給の時期方法については相手方の生存中を限り分割して定期手に支払うこととするのが至当であって、その場合扶養料の額は、これを支払う当事者が将来相当の収入を得る見込の存する限り、必ずしもその現在有する財産の範囲に止められる必要はない。
さてわが国について見ると、離婚に際して不法行為に基く損害賠償として慰籍料の請求を認めることは判例学説の一致するところであり、財産分与については前記の通り民法第768条並びに第771条の定めるところであるが、離婚扶養料については直接これを定めた法律の規定は存しない。しかしながら大正14年臨時法制審議会の決定した親族法改正要綱には『離婚ノ場合ニ於テ配偶者ノ一方が将来生計ニ窮スルモノト認ムベキトキハ相手方ハ原則トシテ扶養ヲ為スコトヲ要スルモノトシ』云々と定め、また昭和21年臨時法制調査会の決定した民法改正要綱にも『離婚したる者の一方は相手方に対し相当の生計を維持するに足るべき財産の分与を請求することをうるものとし』云々と定めていた沿革を考慮しつつ、民法第768条第3項が裁判所は『一切の事情を考慮して』『分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める』旨を規定している点を考えれば、右民法の定める財産分与には前述のような離婚扶養料の趣旨も亦加味されており、且つ右の『方法』のうちには時期の点も含まれ、裁判所は離婚後一定の時期に又は分割して財産の給付をさせることも許されると解するのが相当である。そこで例えば財産を分与する者が退職したときに一定額を支払わしめたり、分与を受ける者の生存中を通じ又は生存中の一定期間を限り定期的に一定額を支払わしめたりすることも亦事情によっては相当であるということができる。
そうして右の『一切の事情』のうちには、既に当事者間で慰籍料の支払がなされ乃至はその額が決定された場合にはその事実も含まれると解すべきであるが、更に財産分与の請求と同時に慰籍料の請求がなされているときは、その慰籍料の請求が認められるかどうか及びその額も亦財産分与を決定する事情として考慮されなければならないとするのが当然であり、一方慰籍料の額も亦財産分与がなされるかどうか並びにその額及び方法の点を含め一切の事情を考慮して決定すべきものと解するのが相当であるから、右の両請求が同時になされている場合には裁判所はまず被告に慰籍料支払の義務があるかどうかについて判断し、その認められる場合には、しかる後に財産分与をさせるかどうか並びにその額及び方法と慰籍料の額とを互に関連せしめて同時に決定すべきである。」
この裁判例は、財産分与の持つ3つの性質をそれぞれの特質に触れながら分かりやすく対比している。この判旨を参考にしつつ、上記3つの各性質を模式図的に比較対照する表を示すと次頁のとおりである。
3 財産分与の中で清算的性質が中核であることを示した裁判例
上記の財産分与の持つ3つの性質はそれぞれが対等ということではなく、通説によればその中心は夫婦共有財産の清算という性質である。このことを明言した裁判例は多い。
例えば、大阪地判昭和29年4月28日(家月7巻6号77頁)は、「思うに離婚による
財産分与の制度は婚姻中に夫婦の一方が取得する財産はもとより、婚姻生活を通じてその維持し得た財産も、夫婦の共同生活における協力関係から言って、実質的には夫婦の共有に属するものとみて、離婚の場合これを清算するというのが中心的な根拠をなすものであるが、他方また離婚後の配偶者の扶養の意味もこれを無視することはでできない・・・。」と判示した。
大阪地判昭和43年6月27日(判時533号56頁)は「而して離婚に伴う財産分与については、それが夫婦共通財産の清算を中核的要素とし、離婚慰籍料や離婚後の扶養料的要素をも含む包括的な離婚給付であると解すべき・・・」と判示した。
財産分与における清算的要素が中核をなすものであるとすれば、扶養的性質は付随的性格を有するということになる。
財産分与の性質
清算的性質 | 扶養的性質 | 慰謝料的性質 | |
---|---|---|---|
意味 | 婚姻生活中に協力により取得し、又は維持した財産(夫婦共有財産)の清算。 | 婚姻生活中に協力により取得し、又は維持した財産(夫婦共有財産)の清算。 | 離婚原因を作った者から他方配偶者に対して損害(慰籍料)を賠償すること。 |
特 徴 | 条文の文言からしても財産分与の中核をなす(鹿児島家審昭和43年7月25日(判夕238号279頁))、大阪地判昭和29年4月28日(家月7巻) | 清算だけでは離婚後の生活に不安が生じる場合に使われる(補充的役割)。 | 双方が離婚原因につき有責であったり、その程度が互いに不明の場合等には請求できない。 |
夫婦間に共有財産がない場合 | 清算すべき財産が存在しない以上請求不可 | 夫婦共有財産がなくても支払義務者に定期的な収入があったり個人として資産を持っていることがありうる以上、請求可となる余地あり | 被害配偶者が精神的に被る損害の賠償が目的である以上、共有財産の有無・程度とは無関係に発生する。 |
算定の基準等 | 原則として2分の1 | 生活保持義務ではなく生活扶助義務が基準(最判昭和46年7月23日(判夕266号174頁))。 | 有責行為の態様、婚姻期間、同居期間、子の有無、精神的苦痛の程度等諸般の事情を考慮 |
支払の時期・方法等 | 支払時期については対象財産の性質によって異なり得るし、方法についても現物のままで分割ということもあり得る。 | 一時全額払いもあるが終身の分割払いという方法もある。 | 原則として一時全額払い。 |
限界 | 分与の額は共有財産の額が上限である。換価不能な財産や条件付権利は対象にならない。 | 相手方の定期的な収入が見込めない場合には支払いを受けられないことがあり得る。 | 権利として発生していても相手方に財産がなければ事実上支払いを受けることはできない。 |
及した裁判例として、東京地判平成16年6月23日(WLJ2004WLJPCA06230009)があり、「財産分与の性質については、…夫婦が婚姻中に有していた実質上の共同財産を清算分配し(夫婦財産の清算)、離婚後における一方の当事者の生計の維持を図ること(離婚後の扶養)を目的とし、さらに、当事者双方の一切の事情を考慮すべきものであるから、有責行為により離婚に至らしめたことについての損害賠償のための給付(慰籍料)も含むものと解すべきである。…また、離婚後の扶養については、夫婦財産の清算では離婚後の配偶者の保護が十分でない場合に、当事者の能力・資力など一切の事情を考慮して補充的に認められるものと解すべきであるから、夫婦財産の清算が十分になされるのであれば、必ずしも考慮すべきものではない。」と判示した。
この裁判例を前提にすると、財産分与に基づく扶養料については、夫婦財産の清算だけでは離婚後の配偶者の保護が十分でない場合に当事者の資力などの諸事情を考慮してその請求の可否が決せられるということになる。
なお、ここで、財産分与の義務を負う側の経済状況を4つの類型に整理しておきたい(妻側に付く代理人弁護士としては夫がこの類型のどれに属するかは重要である)。
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(「ほんとにあった不倫の修羅場」 日本博識研究所・著 から一部引用しています)
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