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いじめと探偵

兆候は「親の金を抜く」「妹のパンツを売りに行く」

 継続するカツアゲも最初はささいなことから始まる。

3カ月で1000万円を脅し取られた高校2年生のケースを例に、カツアゲ事例の発生から解決までの流れを紹介する。

 ある時、同じ学校に通う6,7人の仲間集団が学校帰りにファストフード店で食事した。その際1人の生徒が、仲間から「今日は、お前のおごりな」と言われ勘定を支払わされた。これが1000万円をカツアゲされることになったきっかけだ。

 今の高校生は、当たり前のように財布に2000~3000円は持っている。一時期、中高生の間で、ファストフード店等で飲み食いした後、気の弱い子を1人取り残し、他の生徒が一斉に「ごちになります」と言って、店を出ていく行為が流行った。継続するカツアゲも最初は数千円という額からスタートする。小学生の場合は、数百円から始まる。これがカツアゲ事例の共通点だ。

 仲間からターゲットにされた生徒は、繰り返し食事代を負担させられる。ゲームセンターに行けば「お前が払え」と言われ、ここでも全員分を払わされる。被害生徒も抵抗しないわけではない。ところが、この被害生徒がお金を出し渋ると、仲間に襟首をつかまれ体を殴られる。そして「お前何様のつもりだ」と凄まれる。払えば、仲間集団は「おれたち友だちだよな」と言ってニコニコする。

 被害生徒の心理には、脅されるのが怖いという気持ちと仲間はずれが嫌という気持ちが同居している。カツアゲする側も暴力を匂わせたかと思うと友だちのように振る舞う。アメとムチを使い分ける。しかし、一旦このループに入ると抜け出すのは難しい。カツアゲを行うグループに特別な絆はない。1000万円の被害に遭った生徒の場合もそうだ。彼は通学路が同じだった。同じ学校に通う生徒集団のメンバー全員からカツアゲされたが、この集団にはたまたま通学路が同じという以外の共通点はない。

 一度、仲間から「あいつは言えば払う」と思われると際限がなくなる。カツアゲの額もだんだんエスカレートする。1000万円事例の被害生徒は、友だちの買い物につきあわされ洋服代ばかりかゲーム機代も負担させられた。こうなると仲間集団ではなく、いじめ集団に財布代わりとして使われているのがあからさまになる。この被害生徒は、加害生徒から「親が病気になって家の生活が大変だから100万円貸してくれ」と言われ、その言葉に従って金を渡した。またある時には、「実家の事業が傾いたから100万円貸してくれ」と言われその通りの額を渡した。その後も同じ集団から100万円単位のお金を無心され続け、彼らの言葉に従った。

 だがこんなことをいつまでも続けられるわけがない。高校生が自由にできるお金の額には限界がある。彼は、親から月2,3万円の小遣いをもらっていたが、それではとても追いつかない。また、この被害生徒は、お年玉などを貯めた200万円家ら00万円の貯金も持っていたが、それもあっという間に消えた。継続するカツアゲ被害に遭う子供は短期間で自分の貯金を使い果たす。

 こうなると、いろいろな理由をつけて親からお金をせびり出す。この被害生徒もそうだが「塾の教科書が変わったから5000円いる」とか「塾の特別プログラムに120万円いる」

などと、様々な理由をつけてお母さんから毎月100万円単位の金をもらった。また、頻繁に祖父母の家を訪れてお小遣いをねだった。被害生徒の意識は、どうしたら友だちに脅されずに済むかより、どうやってお金を工面するかに集中してしまう。

1000万円の被害生徒はしていなかったが、中にはアダルトショップで妹のパンツを売ってお金を工面した被害生徒もいる。その被害生徒は妹の写真とパンツをアダルトショップに売って数千円のお金を作った。女の子は自分のパンツがなくなると当然気づく。この時は、妹が兄の不審な行動を親に報告しカツアゲ被害が発覚した。

 そして、いよいよ金を工面する方法がなくなると、親の財布からお金を抜く。1000万円の被害に遭った生徒も、台所の食器棚にあるお母さんの「へそくり」が入った封筒から1000万円を抜き、家族の誰もがその保管場所を知っている一家の生活費が入った財布から、たびたび数万円単位の金を抜き取った。

 ここまでくると、親御さんもわが子の不審な行動に気づき始める。

どうもウチの息子は金に困っているようだ

 「多分ウチの息子は何らかのトラブルに巻き込まれていると思う、とにかく金が必要なようだ。本人に聞いても話さないので、どんなトラブルに巻き込まれているか調べて欲しい」

 ある日40代くらいの男性の声でこんな内容の電話がかかってきた。電話の主は1000万円被害生徒のお父さんだ。カツアゲ事例の依頼者のほとんどは被害生徒の親御さんだ。聞けば、息子が親を騙してまで金を工面していることに気づいたこのお父さんは、わが子に詰め寄った。

 「お前、何にそんなに金がかかるんだ。塾で必要とか言っていたが、塾に問い合わせたら、そんなものはないと言ってたぞ。一体、何をやってるんだ」と怒鳴りつけた。

 しかし、本人は貝のように口を閉ざして何もしゃべろうとしない。だから、探偵に依頼しようと思ったという。探偵は、依頼を受けることを前提に依頼者の自宅に赴いた。この時点で依頼者は、自分の息子がカツアゲに遭っているとは夢にも思っていない。逆に探偵のほうは、いじめ=カツアゲされているのではないか、という予感があった。  

 依頼者の自宅は豪華な一戸建てで、裕福な暮らしぶりがうかがい知れた。お父さんは会社を経営していて多忙な日々を送っている。朝早く家を出て夜遅くなるまで戻ってこない。「ふだん、父親の顔が見えない」家庭状況は、いじめ事案と切っても切れない関係にある。

 それにしても、1000万円も取られるまで、わが子の不審な行動に気づかないとはにわかには信じられない。だが、被害額は調査終了時に確定したもので、この時点で家族は息子は金で困っていると漠然と思っていたにすぎない。依頼者宅の家計はお母さんが1人で管理していた。毎月、お母さんがその月に必要な生活費の額をお父さんに伝えお父さんはお母さんが要求する額をそのまま渡す。月々の生活費は一律ではなく多少変動があるのが常だった。ところが、過去数カ月、お母さんが要求する額が急増している。それも半端な上昇率ではない。

 そう感じたお父さんは、妻に「どうしてこんなにお金がかかるのだ」と聞いてみた。するとお母さんは「あの子(被害生徒)が塾の新プログラムとかで、お金がいるとか、いろいろ言ってくるから」と返答した。しかし、お母さんからいろいろ説明を受けるうちに、お父さんはそんな馬鹿なことがあるわけないと感じた。何らかの理由で、わが子が金銭トラブルに巻き込まれているに違いないと判断した。

 後に聞いた話だが、この時点でお母さんは、自分の財布からお金が抜かれていることにうすうす気づいていた。だが「きっと息子には彼女でもできて、お金がいるんでしょうくらいに思っていた。」という。被害生徒以外の家族の人々と話してみてわかったのだが、このお母さんは、娘さん(被害生徒の妹)から「サザエさんみたいなお母さん」と言われるほどおおらかな性格の持ち主だった。

 結果的に被害額がカツアゲとしては異例の1000万円にも上がった背景には、裕福な家庭環境、ふだん家で過ごす時間が極端に少ないお父さん、そして、のんびり屋のお母さんの存在があったと言わざるを得ない。

 親御さんと調査方針を打ち合わせした時、探偵は「息子さんに直接合わせて欲しい」と要求した。親子間で言えないこともアカの他人には話す確率が高い。だが、当初お父さんは「あなたは調査だけしてくれればいい」と頑なに反対した。どうも、私立探偵などという怪しい職業の人間をわが子に引き合わせたくないようだ。だが、探偵は「自分は教員免許も持っているので、安心して欲しい」と親御さんを説得し、結局、お父さんが雇った「生活トレーナー」というかなり無理のある肩書気で被害生徒と接した。

 さらに探偵は、家族の全員が知っている、生活費が入った財布が置いてある場所に隠しカメラを設置して、本当に息子さんがお金を抜いているか確認することも提案した。今回の事案では、固く口を閉ざした男子生徒に本当のことを言ってもらわなければ調査は進まない。動かぬ証拠を突きつけられれば彼も真実を語る。その証拠を取るための隠し撮りだと説明した。が、これも反対された。普通は、この手の隠し撮りは親御さんから頼んでくるケースが多いが、この家の人たちはどこまでも息子を信じたいという気持ちが強かった。

 そこで探偵は「家族同士で隠し撮りをやったのでは、家族の絆がバラバラになる危険があるが、今回は部外者の専門家が行うのです。それに外部から泥棒が入って、お金を抜いている可能性ある。そのことを確認する意味でもカメラを設置したほうがいい」と説得し、やっと了承を得た。

 

 

Love&Free探偵事務所では、学校でのいじめ調査に適した最新機器の貸し出しも行い、証拠確保をお手伝いしています。

浮気調査等で得たノウハウを活かして、大切なお子様の命を守るお手伝いをしていきます。我が子のかけがえのなさは理解しているつもりです。

 

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(「いじめと探偵」 幻冬舎新書・阿部泰尚著 から一部引用させていただいています)

 

 

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